no title


とにかく疲れていた。

木曜。朝から重いものを振り回した。
電車で隣に立ってたババアの脇が臭かった。

先輩に嫌味を遠回しに何度も言われた。
元彼から下心丸見えのLINEが来た。
ソシャゲで推しが来た。

わたしのただ息をするだけの一日が
ばかみたいにどうでもいい事で少しずつ削れた。

家に帰る前に心の体力が尽きそうで、
遊んで帰りたかったけどそんなお金もなく、
乗り換えの駅で休んでいた。

日が落ちているとはいえ、
昼間まで30度を超えていたため街はまだまだ暑い。

かといって帰る気分にもならず、
ただただただただボーーーーーっとしていた。

その時に突然声をかけてきたのがそのオッサン。

虚無を見ていた私の事を
円光声掛けまちの女だと勘違いしたらしい。

べつに勘違いされたことはどうでもよかった。
都心にいればよくあることだから。

私は拒否の意を示すべく立ち上がろうとしたが、
その瞬間オッサンがつぶやいた言葉に
興味を持ってしまった。

「本番ナシ、オシッコ、1マン。飲みだけ。」

3


マジか。

このオッサン、こんなブスの尿を飲むのか。マジか。

不意を打たれて
若干固まっている私を見てオッサンは続ける。
「飲んだらすぐ終わりでいいよ。」

2


オッサンは本気だった。

示された場所は
そんなに遠くない場所にある公衆トイレだった。

人目を確認し、誰もいないことを確認して
二人でさっと中に入る。

男子トイレに入るのは、小学生の大掃除以来。
こきたないその空間がずいぶん新鮮に見えた。

オッサンは慣れた足取りで一番奥の個室に向かう。
私もついていく。

トイレに向かう途中、私はオッサンと話をした。

オッサンは40代半ばで、しがないサラリーマンである。
高校生の子供が2人と妻と愛人がいるらしい。

浮気じゃんかと笑ったら、妻にも愛人がいて
お互いそれを隠していないと返してきた。

妻のことは好きだし、添い遂げるつもりでいる。
ただ、悲しいくらいに性癖が合わなかった。
そう悲しそうに語っていたのがすごく印象的だった。
妻は輪姦や高圧的なプレイを好むが、
スカトロに近い行為は一切受け付けないのだという。

愛人のこと性癖のことは子供にはタヒぬまで、
タヒんでも言わない、と繰り返していた。

トイレは和式だった。

私は洋式しか使わない主義だったが、
なるほど飲尿にはこっちのほうが都合がいい。
スペースもあるし万が一飲みきれなかったときに
すぐに下方向に吐き出せる。

オッサンは私に1万円を渡してから、
小声で「パンツくれたらもう5千円出せるよ」と言った。

しかしそうするにはパンツの換えを持っていない。
そう素直に伝えるとオッサンは黙って、
新品の、袋に入ったパンツを自分のカバンから
そっと取り出した。あまりにも準備がいい。プロである。

けれどさすがに断った。立つ鳥が跡を濁さない飲尿と違い、
下着売買は跡が濁りすぎる。

オッサンはこれまた黙って拒否を受け入れ、
そのまましゃがみこんで私を見た。

私が困惑していると
オッサンがなにやらジェスチャーをしてくる。
さあ飲ませろ、ということらしい。

もう少し妙な迫りをされると思っていたので
これには拍子抜けだった。
このオッサンはどうやら本気で尿を飲みに来ているらしい。

それならば私もオッサンの本気に答えてやらねばなるまいと
勢いよくパンツを脱ぎ、靴を脱ぎ、片足を抜いて、
そしてオッサンの上に跨った。
オッサンの瞳がきらきらと光る。

しかし、そのまま放尿することはできなかった。
無意識のうちに緊張しているのか、
尿が出そうなぎりぎりの所で停滞して出てこない。

本当にあと少しだ。
正直ここまで出かけてるならとっとと出したい。
しかし躊躇が抜けない。

オッサンが心配し始める。私も焦る。

そしてオッサンがなにか言いかけたところで
私はようやく気付く。
オッサンはスーツを着ている。
私はスーツに尿が飛んで、
スーツを汚してしまわないか不安だったのだ。

勢いのままオッサンの顔に股を一気に近づける。
ビビるおっさんにも構わず、私は小声も忘れて言う。
「いきます!!!」

かくして私は名も知らぬオッサンの喉をめがけて放尿した。

最後にトイレに行ったのは昼。
その後で私はお茶をペットボトル1本分飲んでいる。
尿は勢いよく噴出した。

驚愕するオッサン。しかしオッサンはプロである。
すぐに平静を取り戻し、器用にも口を大きく開けて
上を向いたままで喉を鳴らし、私の尿を飲む。

シャーーーーーーッ!!!ゴキュッ!!!ゴキュッ!!!

55

公衆トイレに意味不明な音が響く。
小学生の頃の担任の顔を何故か思い出した。

その瞬間、私は確かに別世界を扉の隙間から覗いていた。

股を拭いてパンツを穿いて、改めてオッサンに礼を言い、
オッサンが人の気配がないことを確かめて、
それから外に出た。

33

オッサンとはその場ですぐに別れた。
連絡先も何も聞かれなかった。それで私も家に帰った。

あのオッサンは
これからも見知らぬ女の便器になり続けるのだろうか。

個人の幸福なんて私にはわからない。
けれど尿を飲んでいる瞬間のオッサンのあの顔は
この上ないほど幸せそうであった。

どうかこれからも異常として
排斥されながら幸福に生きてほしい。本気でそう思った。

それはそれとして
私は二度と他人に尿を飲ませないと誓ったのだった。




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増田文学

引用元
https://anond.hatelabo.jp/20180628211754